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「孫の結婚や出産に備えて、まとまった資金を非課税で渡しておきたい」「結婚・子育て資金の一括贈与が廃止されると聞いたが、今から始めるべきか、それとも見送るべきか」――2026年夏に公表された税制改正要望を受けて、こうした疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
本記事では、結婚・子育て資金の一括贈与について、廃止が要望されている現状と、すでに拠出した資金の扱いを整理します。そのうえで、期限までに拠出するかどうかを判断するための「3つの出口」の考え方と、制度がなくなった後も結婚・出産の費用を非課税で援助できる方法、その注意点を解説します。
※本記事は2026年10月調査時点の税制・情報に基づいています。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度とは、父母や祖父母などの直系尊属が、金融機関と契約して開設する専用口座(信託・預金など)を通じて子や孫に結婚・子育て資金をまとめて贈与した場合に、受贈者1人あたり1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。このうち、結婚に際して支払う金銭は300万円が限度とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる贈与の期間 | 2015年(平成27年)4月1日〜2027年(令和9年)3月31日 |
| 受贈者(もらう人) | 18歳以上50歳未満の子・孫など |
| 所得の要件 | 贈与を受けた年の前年の合計所得金額が1,000万円以下 |
| 非課税の限度額 | 1,000万円(うち結婚に際して支払う金銭は300万円まで) |
| 対象となる費用の例 | 結婚:挙式、新居、引越しなど 子育て:不妊治療・妊婦健診、出産・産後ケア、小学校就学前の子の医療費、保育料(ベビーシッター代を含む)など |
参照:国税庁タックスアンサー No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4511.htm)
参照:国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和7年7月)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/0025005-102_01.pdf)
参照:こども家庭庁「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について」(https://www.cfa.go.jp/policies/shoushika/zouyozei/)
この制度は、令和7年度の税制改正で適用期限が2年延長され、現在は2027年(令和9年)3月31日までの贈与が対象です。しかし2026年8月、所管するこども家庭庁は令和9年度税制改正要望の中で、この期限の到来をもって制度を廃止することを要望しました。
要望書では、制度が高齢者の資産を若い世代へ移すうえで一定の役割を果たしてきたとしたうえで、「近年は利用件数が低迷しており、今後の利用増加も見込み難い状況である」ことを理由に挙げています。要望書に記載された利用件数は、令和5年が217件、令和6年が253件、令和7年が219件です。金融庁の令和9年度税制改正要望の資料にも、この制度の廃止が記載されています。
参照:こども家庭庁「令和9年度税制改正要望(見直し事項)」(財務省掲載)(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2027/request/cfa/09m_cfa_k_01.pdf)
参照:金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/fsa_trps_r9.pdf)
参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_02.htm)
なお、同じく一括贈与型の非課税制度である「教育資金の一括贈与」は、2026年(令和8年)3月31日で対象期間が終わり、同年4月1日以後の贈与には適用できなくなっています。子や孫へまとめて資金を移す非課税制度は、縮小の流れにあるといえます。
参照:国税庁タックスアンサー No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm)
要望書では、廃止とあわせて「同日までに拠出された金銭等については、引き続き本特別措置を適用できることとする」としています。つまり要望どおりになった場合でも、2027年3月31日までに専用口座へ拠出した資金は、廃止後も引き続き制度の対象として扱われる見込みです。
ただし、現時点ではあくまで省庁からの「要望」の段階です。廃止するかどうか、また既存の口座をどう扱うかは、例年12月に公表される与党の税制改正大綱で方向性が示されます。拠出を検討している方は、大綱の内容もあわせて確認するようにしましょう。
参照:こども家庭庁「令和9年度税制改正要望(見直し事項)」(財務省掲載)(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2027/request/cfa/09m_cfa_k_01.pdf)
「廃止される前に入れておいたほうが得」と考えがちですが、この制度の非課税は拠出した時点で確定するものではありません。口座が最終的にどのような形で終わるか(出口)によって、残ったお金に相続税や贈与税がかかる仕組みになっています。拠出を判断する前に、次の3つの出口を押さえておきましょう。
| 出口(契約中・契約終了時に起きること) | 使い残した資金(残額)の扱い |
|---|---|
| ①贈与者(祖父母など)が亡くなった | 相続税の対象(孫などは2割加算の対象) |
| ②受贈者(子・孫)が50歳になった | 贈与税の対象(2023年4月1日以後の拠出分は一般税率) |
| ③受贈者(子・孫)が亡くなった | 贈与税はかからない |
このほか、口座の残高がゼロになり、受贈者と金融機関が契約終了に合意した場合にも契約は終わります。
参照:国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和7年7月)[Q4-1]〜[Q5-3](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/0025005-102_01.pdf)
契約期間中に贈与者が亡くなると、その時点で口座に残っている金額(管理残額)は、受贈者が贈与者から相続または遺贈で取得したものとみなされ、相続税の対象になります。さらに、2021年(令和3年)4月1日以後に拠出された分に対応する管理残額は、相続税額の2割加算の対象です。受贈者が孫の場合、子が相続する場合よりも税負担が重くなりやすい点に注意が必要です。
参照:国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和7年7月)[Q4-1][Q4-2][Q4-4](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/0025005-102_01.pdf)
ここで、生前贈与の「7年ルール」(生前贈与加算)との違いも整理しておきましょう。7年ルールは、相続開始前の一定期間内に受けた暦年贈与を相続財産に加算する仕組みで、2027年(令和9年)1月1日以後の相続から対象期間が段階的に延びていきます。一方、結婚・子育て資金の管理残額は、いつ拠出したかに関係なく、贈与者が亡くなった時点で口座に残っていれば相続税の対象になります。拠出から年数が経っていても「もう相続とは関係ない」とはならない点が、7年ルールとの大きな違いです。
なお、贈与者から相続や遺贈で管理残額以外の財産を取得しなかった人(相続時精算課税に係る贈与を受けている人を除きます)は、生前贈与加算の対象者には含まれません。孫がほかの財産を相続しない場合などは、暦年贈与の加算と管理残額の課税を分けて考える必要があります。
参照:国税庁タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm)
受贈者が50歳に達すると契約は終了し、使い切れなかった残額は、その年の贈与税の課税価格に算入されます。この場合、受贈者は翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告が必要です。
また、2023年(令和5年)4月1日以後に拠出された分のうち非課税の適用を受けた金額に対応する部分には、税率の低い「特例税率」ではなく「一般税率」が適用されます。父母や祖父母からの贈与であっても、特例税率の対象にならない点に注意が必要です。
参照:国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和7年7月)[Q5-1][Q5-2][Q5-3](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/0025005-102_01.pdf)
受贈者が亡くなったことで契約が終了した場合、口座の残額は贈与税の課税価格に算入されません。ただし、これは受贈者側の事情による終了であり、拠出を判断する際の前提にはしにくい出口です。実務上は、出口①と出口②のどちらに当たる可能性が高いかを考えることが判断の中心になります。
参照:国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和7年7月)[Q5-2](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/0025005-102_01.pdf)
3つの出口を踏まえると、判断のポイントは「拠出した資金を、受贈者が50歳になるまでに、そして贈与者が元気なうちに、結婚・子育ての費用として使い切れるか」に集約されます。目安として、次のように整理できます。
| 拠出を検討しやすいケース | 見送りを検討したいケース |
|---|---|
| 結婚・出産の予定が具体的で、数年以内に使う見込みがある | 結婚や出産の予定が決まっておらず、使い道が見えない |
| 保育料など、継続的に支払う子育て費用がすでに発生している | 拠出額が大きく、50歳までに使い切れるか分からない |
| 受贈者が領収書の提出など、口座の管理を自分で続けられる | 贈与者が高齢で、残額が相続税(孫は2割加算)の対象になる可能性が高い |
| まとまった金額を早めに移しておく理由が明確にある | 必要なときに必要な分を援助する形(都度贈与)で足りる |
「廃止される前に上限の1,000万円を入れておく」という判断は、使い切れなかった場合に相続税や贈与税として戻ってくる可能性も含めて考える必要があります。拠出額は、上限から考えるのではなく、実際に使う予定の金額から逆算することが失敗を防ぐポイントです。
結婚・子育て資金の一括贈与がなくなっても、子や孫の結婚・出産を非課税で援助する方法がなくなるわけではありません。夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から、生活費や教育費に充てるために受け取った財産のうち、通常必要と認められるものには、もともと贈与税がかかりません。ここでいう生活費には、治療費や養育費その他子育てに関する費用も含まれます。
ポイントは、生活費や教育費として「必要な都度、直接これらに充てる」ためのものに限られるという点です。
参照:国税庁タックスアンサー No.4405 贈与税がかからない場合(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm)
国税庁は、扶養義務者から生活費や教育費の贈与を受けた場合の取扱いをQ&Aで示しています。結婚・出産に関わる主な場面の考え方は、次のとおりです。
| 場面 | 国税庁Q&Aで示されている考え方 |
|---|---|
| 結婚披露宴の費用 | 本来その費用を負担すべき人がそれぞれ分担している場合は、そもそも贈与に当たらない |
| 結婚に際しての家具・寝具・家電などの購入費用 | 家具などの贈与を受けた場合や、その購入費用に充てるための金銭の贈与を受けて全額を購入に充てた場合は、通常必要と認められる範囲で課税されない |
| 新居の家賃 | 子が自らの資力で家賃などを負担できないといった事情を踏まえ、社会通念上適当と認められる範囲で親が負担している場合は課税されない |
| 出産費用 | 検査・検診代、分娩・入院費に充てるための贈与や、新生児の寝具・産着などのベビー用品の購入費に充てた部分は課税されない |
参照:国税庁「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」(平成25年12月)(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sozoku/131206/pdf/01.pdf)
都度贈与には金額の上限がない一方で、使い方を誤ると課税されます。同じQ&Aでは、数年間分の生活費などをまとめて贈与した場合、実際に生活費などに充てられなかった部分は贈与税の対象になるとされています。また、生活費や教育費の名目で受け取っても、それを預金したり、株式や不動産の購入に充てたりした場合には贈与税がかかります。
「将来の出産費用として先に渡しておく」「結婚祝いとして渡したお金を子がそのまま貯金している」といった形は、都度贈与の非課税にはあてはまりにくくなります。援助するときは、請求書や領収書に合わせて支払い時に渡す、可能であれば支払先へ直接振り込むなど、何の費用に充てたかを後から説明できる形にしておくことが大切です。
参照:国税庁タックスアンサー No.4405 贈与税がかからない場合(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm)
結婚・子育ての援助に使える方法は、都度贈与だけではありません。目的や時期に合わせて、次のような制度を組み合わせることも考えられます。
| 方法 | 非課税・控除の枠 | 向いている場面 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円(うち結婚300万円) | 2027年3月31日までに拠出でき、使い道が具体的に決まっている | 贈与者の死亡時・受贈者の50歳到達時の残額に課税 |
| 必要な都度の贈与 | 金額の上限はない(通常必要と認められる範囲) | 挙式・新生活・出産などの支払いを、その都度援助したい | まとめ渡しや預金化した部分は課税 |
| 暦年贈与 | 年110万円の基礎控除 | 使い道を限定せずに資金を渡したい | 相続で財産を取得する人への贈与は、生前贈与加算(7年ルール)の対象 |
| 相続時精算課税 | 特別控除 累計2,500万円+年110万円の基礎控除 | 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ、まとまった資金を渡したい | 一度選択すると暦年課税に戻せない。相続時に精算される |
| 住宅取得等資金の贈与 | 省エネ等住宅1,000万円/それ以外の住宅500万円 | 新居を購入・新築する資金を援助したい | 2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象 |
参照:国税庁タックスアンサー No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
参照:国税庁タックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm)
参照:国税庁タックスアンサー No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm)
結婚・子育て資金の一括贈与は、取扱金融機関で専用口座を開設し、金融機関を通じて「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する手続きが必要です。廃止が要望されている今、拠出を検討する場合は、次の点を早めに金融機関へ確認しておきましょう。
受付の締切:2027年3月31日までの拠出に間に合うか、口座開設や書類準備にどの程度の期間がかかるか
払出しの方法:受贈者が先に支払って領収書で精算する方法か、金融機関から支払先へ直接支払う方法か
領収書の提出期限:払出しの方法に応じて、支払った日から1年を経過する日、または支払った年の翌年3月15日までとされています
参照:国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和7年7月)[Q2-1][Q3-1](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/0025005-102_01.pdf)
受贈者が50歳に達して残額が生じた場合などは、受贈者の住所地を所轄する税務署へ贈与税の申告が必要です。横浜市内では、住んでいる区によって所轄の税務署が分かれています。また、贈与者が亡くなった場合は、管理残額を含めて相続税の申告が必要かどうかを判定することになります。
一括贈与を使うか、都度贈与や他の制度に切り替えるかは、贈与者の財産全体や将来の相続税の見込みによって有利・不利が変わります。金融機関の手続きと相続税の両面から判断が必要になるため、迷う場合は相続税に詳しい税理士に相談することも一つの選択肢です。
結婚・子育て資金の一括贈与は、廃止が要望されているからといって、急いで拠出すれば得をする制度ではありません。使い切れなかった残額には相続税や贈与税がかかるため、「いくら入れられるか」ではなく「いくら使うか」から考えることが大切です。親(あげる側)と子(もらう側)、それぞれの立場で押さえておきたいポイントを整理します。
拠出額は使う予定の金額から逆算する:上限の1,000万円を前提にせず、結婚・出産・保育料など、具体的に見込める支出から金額を決めましょう。
ご自身の年齢と相続税の見込みを踏まえる:契約中に亡くなった場合、残額は相続税の対象になり、孫は2割加算の対象になります。財産全体の中でどう位置づけるかを事前に確認しておきましょう。
都度贈与との併用も検討する:挙式や出産などの支払いをその都度援助する方法なら、一括贈与の期限や残額課税を気にせずに支援できます。
領収書を保管し、期限内に提出する:一括贈与の口座から払い出した資金は、領収書などで結婚・子育て資金に充てたことを確認できないと、非課税の支出として扱われない可能性があります。支払いのたびに保管・提出する習慣をつけましょう。
50歳までの使い道を計画する:使い残しは50歳到達時に一般税率で贈与税の対象になります。残高と今後の予定を定期的に確認しておくとよいでしょう。
都度贈与で受け取ったお金は預金に回さない:生活費や出産費用として受け取った資金は、その費用の支払いに充てましょう。貯金や投資に回した部分は課税対象になります。
結婚・子育て資金の一括贈与の今後の扱いは、例年12月に公表される税制改正大綱で方向性が示されます。ご家族の状況に照らしてどの方法で援助するのがよいか迷う場合は、横浜の相続税に詳しい税理士事務所へ相談することも一つの選択肢です。
| 参考費用 (※1) |
22万円 |
| 無料 相談 |
何度でも 可能 |
| 休日面談 対応 |
〇 |
| 夜間面談 対応 |
21時まで 対応可 |
※宅地建物取引士の資格を保有する税理士が在籍しており、かつ書面添付制度に対応している事務所の中から、無料相談にも応じてくれる事務所から選定。
※1:※資産5000万円以下の費用